前回からの続きです。日本では職場での定期健康診断など予防医療が発達しているため、症状がごく軽いうちに病気の芽が発見されることがよくあります。NZの在住者が日本に帰国したときに健康診断を受けることもあるでしょう。
保険の面では病気やケガが完治していても治療中でも、保険加入以前に発症していた病気や症状、ケガはすべて既往症と見なされます。そのため「医療保険では既往症はカバーされないので、既往症があるのは損!」という意見もあります。
既往症は誤解や解釈の違いで問題が起きやすいことなので、改めて取り上げてみます。まず、なぜそんなに既往症が重要かというと、せっかく医療保険があって保険請求をしても既往症とみなされた場合、保険金がおりないことがあるからです。これが既往症に関する最大の問題です。
既往症に関して一番多い問題は「記入漏れ」です。どこの保険会社の申し込み用紙にも必ず既往症を書き込む欄があります。そこに記入されていなくても、保険加入以前にあった病気や症状、ケガが後から発覚した場合、保険の対象外となることがあります。
記入漏れの理由には「何年も前に完治している」とか「たいしたことではないから」と覚えていても「記入しなかった」、「全く忘れていた」と二通りあると思います。いずれの場合でも、再び症状が出てGPや専門医にかかり質問に答えるとなると、誰でも一生懸命過去の記憶をさかのぼり、ありのままに答えようとするものです。
「以前に似たような症状は?」
「この件で薬を飲んでいたことは?」
「前に血液検査を受けたときの数字は?」
こうした質問に該当し、症状に詳しい(特定の薬の副作用を知っていたり、病気が悪化した場合どういう症状が出るかといった知識がある)となると、医者は既往症と判断してさらに細かく聞いてきます。治療に当たり情報は多ければ多いほどいいわけですから当然でしょう。
そうこうするうちに、本人も忘れていたようなことが思い出されることはよくあります。医者はやりとりをカルテに書き込むので、「10年前に一度症状があった」「数ヶ月間薬を服用していた」「健康診断で指摘を受けていた」などの記述が残ります。
保険請求があった場合、保険会社は担当医と直接連絡を取り合うので、こうしたやりとりがあったことを把握した上で、請求のあった病気や病状が既往症であったかどうかを判断します。ですから故意に既往症を申告しなかったり、申告し忘れていた場合でも、保険請求時に既往症とみなされることがあるわけです。
しかし、保険がおりなかった場合でも、「コミュニケーションミスで医者が事実と違うことを記録した」ということもあるので、保険がおりない理由を必ず確認し、事実と違う場合は医者に保険会社宛の所見を書いてもらうなど、対応を取ることも大切です。
「保険がおりないかもしれないから」と医者に本当のことを告げないのは治療という観点から言えば本末転倒でしょう。既往症は既往症、すでに発症していた事実は覆せないので、これは医療保険の基本ルールとしてぜひご理解を。
次回は場合によっては既往症を保険でカバーすることができる方法をご紹介してみます。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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