今回はリスク管理の話です。と言っても、かしこまった話でも、テロ対策でもありません。ごくごく身近な例です。海外に住んでいると、日本で何かあったとき、特に親の急な不幸は深刻な問題です。国内にいても親の死は一大事ですが、ニュージーランドのような遠いところからの帰省、その後の通夜、葬式となると本当に大変です。特に長男長女となると、悲しみにくれながらのあいさつ、諸手続き、葬式準備と、近親者の助けを得られても精神的、肉体的な負担は想像以上でしょう。
こうして簡単に「死」という言葉を口にしてしまうところが、保険屋の哀しいさがですが、それが現実問題である以上、いざというときのリスクや負担を最小限に抑えることを先回りして考えるのも、保険屋です。
ではどうするか? 人の死は避けられませんので、いざというときにできる限り迅速かつ的確な対応ができるよう考えましょう。一番手っ取り早く確実な方法は、親が元気なうちに遺書を作成しておいてもらうことです。これは財産の大小にかかわらず、です。
仰々しいものである必要はありません。簡単な財産目録と本人の希望をまとめておいてもらうのです。そんなことを頼んだら、雷親父に「オレに死ねってか!」と怒鳴られたり、小心者の母親にさめざめと泣かれたりするかもしれませんが、親がある年齢に達しているのであれば、客観的に話してみる価値は十分あります。
特にご両親のどちらかが資産管理を一括して行っている場合、相手が何も知らないことがよくあります。葬儀費用だなんだと何かと物入りがあるのに、残された母親(もしくは父親)が自分の銀行口座がどこにあるのかさえ分からないケースも出てきます。
そんな場合は、「万が一、母さん一人になったとき、どこに何があるのか分からなかったら困るだろう。私も海外で至ないことも多いだろうから、ここは一つ母さんのためにも一筆残しておいてもらえないだろうか」と、最愛の連れ合いをダシに使う手があります。「そうか、お前のためじゃなく、母さんのためか」と、雷親父も折れるかもしれません。
そうなれば、銀行口座がどこにいくつあるのか、取引先の保険会社や証券会社、不動産などの資産目録、貸し金庫の有無などをリストアップしておいてもらいましょう。株をやっている場合は信用取引、旅行好きであれば旅行会社に旅行積み立てがあるかどうかもさり気なく聞いておきましょう。家族の誰も知らない隠れ借金の有無や、誰かの保証人になっていないかどうかも要チェックです。伏せておくと後で禍根を残します。「備えあれば憂いなし」とまではいかないまでも、憂いが大きく軽減することでしょう。ぜひ次回の帰省時にでもご検討ください。
(つづく)
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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