【生命保険の受取人が本人?】
タイトルをみて、
「どういうこと?亡くなった人が保険金を受け取れないでしょ?」
と思った方、そうなんです。保険をかけて亡くなった人が、自分の死後にどうやって保険金を受け取るのでしょう? NZの生命保険ではこういうケースがけっこうあります。
【受取人は誰になっていますか?】
では、ここで質問です。皆さんの生命保険の受取人は誰になっていますか?
「もちろん、夫婦お互いですよ。相手に何かあったら残された方が全額受け取ります。」
日本人で結婚しているかパートナーがいる場合は、まずこういう答えでしょう。しかし、そうは思っていても、保険証書が実際にそうなっていますか?
【日本人でも受取人が『本人』になっている例】
今まで何度も経験したことですが、日本人のお客様から保険の見直しの相談を受け、すでに加入されている保険証書を確認していく中で、ときどき出くわすのが「生命保険の受取人が本人」という例です。ご加入者が納得しているのであれば全くかまいませんが、今までの例だと、ご加入者はそうなっていることをご存知なく、
「えー!どういうことですか?どうして主人の生命保険の受取人が主人なんですか?」
と、奥さんに質問攻めにあうこともあります。
【宙に浮く保険金】
このままだとどうなるでしょう?ご主人が亡くなると受取人不在ということで、保険金が宙に浮いてしまいます。婚姻関係やパートナーシップの状態にあっても、保険金の受け取りには弁護士を通じて手続きをし、遺産管理法(Administration Act 1969)に基づいて裁判所から正式な受取人として認めてもらう必要があります。これには手続きに多大な時間を要するのみならず、弁護士費用などの負担も少なくありません。
【「受取人が本人」の一番の理由】
どうしてこんなことになっているのでしょう? 一番の理由は、この国では遺言の利用が普及しているからです。保険に加入する時はひとまず本人の署名のみで加入できることから本人を受取人にしておき、その後、遺言できちんと受取人や受取る比率を明記しておけば、そちらが優先されます。そのため、遺言があれば「受取人が本人」でも問題がないのです。
【婚姻関係が複雑な場合は遺言が便利】
次によくある理由として、結婚、離婚、パートナーシップなど家族関係が複雑になり易いNZの状況が挙げられます。受取人を今のパートナー100%にできない、もしくは、したくないため、保険は便宜的に本人を受取人にしておき、遺言でその時々の状況に合わせて受取人を変えていくのです。
遺言は本人と弁護士等の立会人の署名だけで有効になるため、パートナーや子供など関係者に知らせることなく、状況に応じて内容を書き換えることができます。複数の遺言が存在する場合、最も日付の新しいものが有効になります。
【「受取人が本人」の大きな問題】
「受取人が本人」の大きな問題として、先に述べたように遺言がない場合、残されたご家族が保険金を受け取るまでに、多大な時間と弁護士費用などの負担を強いられるだけでなく、本人が家族に黙って遺言を書き換え、残されたご家族が「生命保険の受取人から外されてしまう」という事態もあるので注意が必要です。
こうした事態を避けるために、家族でよく話し合い、
①保険金の受取人をきちんと指名する、もしくは
②遺言を作っていざというときに保険金が宙に浮かないようにする
ということが重要です。
【意外と便利な「受取人が変えられる生命保険」】
「遺言を作るほど資産もないし、家族関係が複雑ではないけど、生命保険の受取人は自分で決めたい。」
という場合は、ご加入後に受取人が自由に変えられる生命保険もあります。この件はすでに取り上げているのでリンクをご参照下さい。
第283回 意外と使える!受取人が変えられる生命保険
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=283
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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