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第136回  2011年の保険を取り巻く環境 

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明けましておめでとうございます。旧年中は仕事やこのコラムを通じてお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。
 
 2011年の保険を取り巻く環境とは、新年からずい分堅いタイトルですが、連日オーストラリア・クイーンズランド州の大洪水の報道を見るにつけ、そんなことを思わずにはいられません。
 
 ピンと来ないかもしれませんが、保険は再保険を通じて世界中とつながっています。どんなに大手の保険会社でも引き受けた保険のリスクを全部自社で負うことはできないので、一部を再保険会社に引き受けてもらいリスクを分散します。その再保険会社はオーストラリアだったり、スイスだったり、イギリスだったりとばらばらです。
 
 保険金請求をしない限り、世界的なつながりを実感することは少ないですが、いざ請求してみると、イメージとしては世界のあちこちから保険金が集まってくるような感じになります。例えば昨年9月のクライストチャーチ地震で住宅や家財保険の加入者が保険を請求したことで、9月末までに保険金として17億ドルが海外から流入しました。NZのワイン輸出の年間総額が約10億ドルなので、この金額がいかに大きいことか。
 
 再保険会社のスイス再保険によれば、クライストチャーチ地震の保険金支払額は約40億ドルに達する見込みで、神戸大震災(約50億ドル)に次いで過去40年間の地震による支払額としては4番目に高いものとなり、自然災害としては2005年にアメリカを襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」に次ぐ規模だそうです。クライストチャーチは神戸と違って人災がほとんどなく死者ゼロという奇跡的な結果になりましたが、建物の損傷は数字を見る限り小さくありません。
(再保険についてはすでに書いているのでご興味があればリンクをご参照)
第18回 ハリケーン「カトリーナ」とNZの保険
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=18
 
 また、この国特有の制度、政府機関であるEQC(地震委員会、民間の住宅・家財保険に入っていないと政府からの支援が受けられない仕組み)がある関係で住宅保険加入率が約9割と高いことも、保険金請求額を大きくした理由と言えるでしょう。
(地震など自然災害とEQCの関係は以下のリンクをご参照)
第127回 保険と地震
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=127
 
 そして今回のオーストラリアの大洪水。同時にブラジルやスリランカ、フィリピンでも記録的な洪水が起きていて、職業柄ニュースを見てはこうした被害の保険料への反映が気になるわけです。自然災害は地球規模で毎年のように拡大しており、保険はその成り立ちからして相互扶助の意味合いが強く、遠い世界の話でもどこかでつながっているのを実感しています。
 
 年頭なのに多くの人にはあまり明るい話ではなかったかもしれませんが、今のところNZはオーストラリアのようなハリケーンにも襲われず、子供たちは夏休みを満喫し、大人もどことなくホリデームードです。何も起きない普段通りの生活のありがたみを感じつつ、クライストチャーチにおいては巨額の保険金流入が、1日も早い完全復旧を支えてくれることを願っています。
 
 このコラムも今年で6年目となりますが、これからも皆さんのお役に立ちそうな情報を取り上げていきますので、引き続きよろしくお願いします。

 

高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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