ときどき受けるご質問に、「生命保険に入りたいのですが、掛け捨て型と積み立て型とどっちがお得ですか?」というのがあります。結論から言ってしまえば、加入の目的次第です。保険商品自体に損得はありません。
「パソコンを買いたいのですが、デスクトップとノートパソコンとどっちがお得ですか?」というのと同じで、購入の目的次第でしょう。外出先で使う必要があるならデスクトップを買っても役に立たないからです。
生命保険なので役に立たないということはないにしても、払い込んだ保険料と受け取った保険金が家計にとって過不足ないものであればいいのですが、いざ受け取ったときに「これでは足りない」となったら話が違ってきます。
具体的な例で見てみましょう。例えば一家の働き手を亡くしたときに残されたご家族が50万ドルを受け取れる生命保険に加入したとします。A社の場合、被保険者を「40歳、男性、非喫煙」とした場合、
掛け捨て型で月々41.67ドル
積み立て型で月々1,617.28ドル(受取金額には運用益が加算されるため、実際は50万ドルを上回ります)
となります。
こうしてみると金額の違いがおわかりでしょう。「月々の負担が大きいので設定額を30万ドルに減らそう」となったら、いざというときに足りなくなってしまいます。掛け捨てという言葉の響きもあって、日本人の間では「掛け捨て型はもったいない」という考えもありますが、キーウィの間では圧倒的に掛け捨て型が人気です。「保障を買う」という発想なので、少額の保険料で多額の保険金が得られることが重要なのです。
というのも、40歳前後となるとほとんどのキーウィが住宅ローンを抱えています。生命保険に加入する最大の理由が、「万が一のときにローンを完済し、残された家族が家を失うことがないように」というためなので、同じ保障設定額なら月々の支払いをできるだけ低く抑えたいわけです。
ローンを返しながら積み立て型で将来のために貯蓄していくよりも、「ゆとりのある返済をしたい」「その分を返済に回して早く完済したい」という考え方です。また、同じ貯蓄なら「いつでも引き出せる銀行預金の方がいい」という考えもあるでしょう。
そのため、NZでは今、積み立て型生命保険が市場から姿を消そうとしています。需要が少ないためにどの保険会社でも商品として存続しがたくなってきたのです。逆に言えば、それだけ生命保険と住宅ローンが密接な関係にあるとも言えます。
ここで最初の質問に戻りましょう。加入の目的がローンのためであれば、掛け捨て型をお勧めします。年齢的に返済と子育てが重なる最も家計のやり繰りが大変な時期でしょうから、ここは負担を小さくしておいた方がいいと思います。将来的にはローン残高が減っていくのに合わせて保障設定を下げていけば、さらに現実的だと思います。
損得はなくても、加入の目的をご家族でよく話し合ってみる価値はあると思います。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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