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第94回  一生ものの保険-医療保険編 

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久しぶりにキーウィの友人に会うと、鼻の頭に絆創膏を貼っていました。さすがに気付かないふりはできないので、転んだのかぶつけたのか聞いてみると、皮膚ガンを取ったと言われ、「ガンを取ったあとに絆創膏かー」と内心びっくりしました。
 
「取ってみたらけっこう奥の方まで広がっていて、また手術をして鼻を3分の1かそれ以上取ることになるかもしれない。」
と言う話を聞き、これにはほんとうにびっくりしました。もちろん、その後に整形手術で鼻を再建するわけですが、たいへんな手術になることでしょう。そろそろ年金を貰える60代の彼女は皮膚ガン暦が長く、もう慣れっこの様子です。
 
 手術には執刀医以外に心臓の専門医も立ち会うことになりました(友人は心臓にもやや問題があります)。設備の整った大病院でしか対応できないので私立病院の手術室を予約し先生方の日程を調整して、後日の整形手術も含めすべての日取りを決めたそうです。しかし、彼女は土壇場で手術をキャンセルしてしまいました。
 
「医療保険も解約した」と言われ、一瞬聞き間違えたのかと思いましたが、友人ははっきり「解約した」と言いました。話を聞くと、加入していた医療保険は自己負担が2割あるタイプだったため、それだけで彼女の負担は2,000ドルを超えそうでした。念のため保険会社に連絡したところ、それぞれの治療に上限があることもわかり、上限を超える部分も自己負担になるので、2,000ドルどころの話ではなくなってしまいました。
 
「そんな金額は払えないから、すぐに手術をキャンセルして保険も解約して公共医療制度を使うことにした。」
と友人は言います。
 
 彼女の医療保険はキーウィがよく利用しているタイプで、自己負担がある分、保険料が安く抑えられるところが人気です。しかし、ちょっとした大きな手術になると平均3~5万ドルの費用がかかるので2割負担であれば6,000~1万ドルの出費を覚悟する必要があります。
 
 さらに保険会社や保険の種類によっては治療や手術に上限を設けています。1回の放射線治療ならいくら、CTスキャンだったらいくらと決まっていると、保険会社が設定した金額以上の部分に関しては全額自己負担になります。
 
 例えば1万ドルかかる治療の保険会社の上限が7,000ドルだったとします。この場合、7,000ドルの2割、1,400ドルと上限以上の3,000ドルの合計4,400ドルが自腹になり、最終の自己負担率は約半分です。「なんのために保険に入ってきたんだ」と思われそうです。
 
 こうなると「保険を解約して無料の公共医療に」という友人の気持ちもわかります。反面、公立病院の手術となるとそれがいつになるのか、当面わかりません。案の定、会った時点では手術の日程どころではなく、「とにかく待つしかない」と言っていました。
 
 この話は次回に続けます。お楽しみに。

 

高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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