今回は、ここ「NZ大好き」のニュースでも盛んに報じられている、「地方保健局による診察待ちリストからの患者の削除」についてお話してみます。記事はこちらで。
http://www.nzdaisuki.com/news/news.php?id=2388
ほとんどの方には、なんの話かピンとこないことでしょう。しかし、この件はニュージーランドで暮らす身にとり、とても重要な問題です。
ニュージーランドは国民や永住者、2年以上のワークビザを持つ人に対し、公共医療機関での“無料医療”を保障しています。しかし、この国の公共医療システムは絶
対的な受け入れ不足で、オークランド、カンタベリー、ウェリントンなどの大都市を中心に、大勢の患者が数ヶ月から1年も初診を待っているのが現状です。
医者に会えないことには診断も出ず、その先の治療・薬の処方、果ては入院・手術もありません。自分がなんの病気なのか、どうして痛みが続くのか、悪化しているのか小康状態なのかもわからないまま、半年以上待たされている患者が、全国で2万5,000人以上もいます。これがNZの“無料医療”の一面です。
なぜそんなに大勢の患者が待たされているのか、ご説明しましょう。この国ではどんな症状であっても、緊急時以外はまずGP(一般医、いわゆる開業医)に行きます。そこで「アトピー」と診断されたとしましょう。すぐに専門医である皮膚科に紹介状が出、患者は紹介状をもとに専門医に予約を入れます。ところが、この予約がかかる科や居住地域によっては、初診が数ヶ月から半年以上先になってしまうことがあるのです。
専門医の初診を待っている人は全国で10万人をゆうに超えています。その中で半年以上待っている人が2万5,000人に上っているわけです。すでに何らかの症状が出ていながら、これだけ待たされるのはさぞや辛く、心細いことでしょう。
ところが、さらに問題を深めているのが、報道にもある「地方保健局による診察待ちリストからの患者の削除」です。どういうことかというと、国である保健省が地方保健局に対し、「専門医の初診を待つ患者を半年以上待たせないように規定」しているため、この規定を守るために地方保健局が半年以上待っている患者をGPに差し戻し、診察待ちリストから名前を削除しているのです!
つまり、専門医に会うことを半年以上待った挙句、会えないままGPに差し戻され、GPが再び紹介状を出して、再度専門医と予約を取り、ということがまかり通っているのです。当然ながら出口の見えない待ち時間の中で病状が悪化したり、最悪亡くなってしまうこともあり、この国の深刻な医療問題となっています。
長期の待ち時間を言い渡された場合、「一刻も早く専門医に」というのであれば、自費で私立病院に行くしかありません。この国には日本のような健康保険制度がないため、公立病院は無料でも、私立病院は全額自己負担となり、それはそれで費用面で相当の負担を覚悟しなければなりません。
こうした現状を穴埋めしているのが、民間の医療保険です。専門医の費用を保険でカバーしようというものです。現在、キーウィの3人に1人が医療保険に加入していますが、この高い加入率は裏を返せば医療問題の深刻さを浮き彫りにしていることにもなります。“無料医療”の国にあっても、最終的に健康を守るのは国ではなく、自分のようです。
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高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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