ニュージーランドには、国民はもちろん永住権や2年以上のワークビザを持つ方も対象となる、無料公共医療という素晴らしい制度があります。しかしながら、実際の診療や治療を受けるためには、数ヶ月から数年にわたる長い待ち時間があるということは、あまり知られていないか、問題に直面するまでピンとこないのが現実のようです。
 
この件はここでも繰り返しお話しているので、詳細は下記のリンクをご参照下さい。
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=11
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=12
 
　実際のところ、どれぐらい待たされるのでしょう。これは地域、タイミング、受診する科によって大きな隔たりがあります。同じ病院でも初診の予約が数週間後になったり２ヶ月先になったりと、ケースバイケースです。ウェリントンほどの都市でも公立病院のレントゲン技師が数人増減しただけで、平均待ち時間に顕著な違いが出ます。
 
　手元に去年８月現在の「カンタベリーの専門医初診待ち時間リスト」（カンタベリー保健局調べ）があるので、具体例を挙げてみます。
 
　ここで言う「初診待ち時間」とは、何らかの症状があってＧＰ（一般医）で診療してもらい、「専門医にかかる必要がある」として紹介状が出た場合、実際に専門医の初診・治療を受けられるまでの期間を示しています。
 
【カンタベリーの専門医初診待ち時間】（抜粋）　　　　（2005年８月現在）
心臓病科　　　　　　緊急：２ヶ月　 準緊急：６ヶ月　 通常：12ヶ月
大腸内視鏡科　　　　緊急：２ヶ月　 準緊急：12ヶ月 通常：ＧＰ
皮膚科　　　　　　　　　　　　　　 準緊急：６ヶ月　 通常：ＧＰ
耳鼻咽喉科　　　　　緊急：１ヶ月　 準緊急：７ヶ月　 通常：ＧＰ
（中耳炎）　　　　　　　　 準緊急：３ヶ月　 通常：５ヶ月
胃腸科　　　　　　　緊急：６ヶ月　 準緊急：ＧＰ　　 通常：ＧＰ　　
一般外科手術　　　　超緊急：1ヶ月　緊急（優先）：３ヶ月　緊急：６ヶ月
婦人科医（診療）　　緊急：1ヶ月　 準緊急：ＧＰ　　 通常：ＧＰ
　　　　（ガン）　　緊急：1ヶ月　 準緊急：２ヶ月　 通常：３ヶ月
眼科（一般）　　　　　　　　　　　 準緊急：７～12ヶ月　通常：ＧＰ
　　（小手術）　　　緊急：６ヶ月　 準緊急：９ヶ月　 通常：12ヶ月
整形外科　　　　　　 緊急：１ヶ月 準緊急：３ヶ月　通常：６ヶ月
小児科（アレルギー）　　　　　　　　準緊急：４ヶ月　通常：５ヶ月
　　　（喘息）　　　　　　　　　　　準緊急：3ヶ月　通常：4ヶ月
　　　（心臓病）　　　　　　　　　　準緊急：３ヶ月　通常：５ヶ月
　　　（皮膚病）　　　　　　　　　　準緊急：２ヶ月　通常：４ヶ月
　　　（手術）　　　　　　　　　　　準緊急：５ヶ月　通常：６ヶ月
泌尿器科　　　　　　　緊急：２ヶ月　準緊急：３ヶ月　通常：ＧＰ
　　　（前立腺検査）　緊急：５ヶ月　準緊急：11ヶ月　通常：11ヶ月
 
病気・検査別では以下のものもあります。
糖尿病　　　　　　　　緊急：１ヶ月　準緊急：１ヶ月　通常：３ヶ月
Ｃ型肝炎　　　　　　　　　　　　　　準緊急：９ヶ月　
パッチテスト　　　　　　　　　　　　準緊急：３ヶ月　通常：12ヶ月
 
　待ち時間とは、いわばＧＰと専門医の間の空白期間です。専門医が診療しないことにはその後の治療・検査・手術などが決まらないため、その間の病状悪化が社会問題になっている非常に不安な期間です。
 
　救急車で運ばれるような事態ではないにしても、「緊急」と診断されていながら数ヶ月待ちを覚悟しなくてはならない、残念ながら、これが今のニュージーランド医療の現状です。